『ミセス・ユウコ。このサロンにIsaac・Izumiの名義で預けていた荷物があるのだけど、持ってきてもらえるかな?』
『Mr.Isaac・Izumi?確かに数日前、百貨店の方からお履物をお預かりしておりますが。あの素敵なJimmyChooの最新コレクションはあなた様の?』

『そうです』
『まあ!!こちらのお嬢様のためにご用意を?では今日いらしたのは本当はアクシデントとというわけではなかったのですわね。お嬢様のためのサプライズ?』

『……それは秘密です』


和泉くんがいたずらっぽい顔で高山さんに笑いかける。

わたしに向けられたものじゃないのに、傍目で見ているだけでもどきりとしてしまうほど余裕たっぷりで魅力的な笑みだった。

こんな顔、直接向けられてしまったら和泉くんがどんなに傍若無人で意味の分からない人だと分かっていても一撃で恋に落とされてしまいそうだ。

高山さんの顔も乙女のようにみるみる赤く染まっていく。でもさすがプロ、真っ白い箱を抱えて帰ってきたときには先ほどまでと変わらない優雅なホテルスタッフの顔に戻っていた。


『ありがとう』


そういって高山さんを下がらせると、和泉くんはいきなりわたしを背後に突き飛ばした。