(4)魔法の靴


「いかがでしょうか」

鏡に映る姿を見て思わず「すてきです」と答えてしまった。高山さんはにっこりと今日一番の笑顔を見せてくれた。


「はい、とても素敵ですわ。お嬢様の生き生きした魅力に少しでも華を添えられていれば幸いです」
「あ、いえ、その」


学校では髪を下ろしているかひとつ結びくらいにしかしていないわたしから見たら、短時間でこんなに凝ったアップが出来ちゃう高山さんのアレンジテクニックがすごくてすてきだと思ったのだけど。

言葉が足らなすぎてうまく伝わらなかったみたいだ。

わたしじゃなくて高山さんが、としどろもどろに言っているうちに和泉くんが覗きに来た。


「な、なに」


検分するような目で上から下まで見られてなんとも居心地の悪い気分になる。

まるで自分の作り上げた作品に瑕疵がないかを見極めるクリエーターみたいな真剣な面持ちだ。完成させるにはあともう1ピース何かが足らない。そんな視線がわたしの髪に留まった。