「いかがでしょうか」
「あ、はい。開けます」
「お疲れ様です……まぁ」


カーテンを開けると、そこに立っていた高山さんが「とてもよくお似合いです」とお世辞だと分かりきっていてもうれしくなることを言ってくれた。

少し離れたところに立っていた和泉くんはこちらをちらりとだけ見て高山さんに話掛ける。


『あとあのひどい髪もどうにかしてあげたい』
『美容室をご案内いたしましょうか?』

『いや。そこまでは。ここのスタッフのミセス・ユウコが簡単なセットはお手の物だと聞いているのだけれど』
『まあ。私の名前をご存知だなんて光栄ですわ。失礼ですが……』

『アリナ・ビュシエールは僕の叔母です。いつもこちらでお世話になっているようで』
『まあビュシエールさま!こちらこそマダムにはいつもご贔屓にしていただいて。わたくしでよかったら、今お嬢様の御髪を整えさせていただきますね』


高山さんはわたしの背後に立つと、髪を梳いたり捩ったりしてポケットから取り出したピンで手早く留めて、あっという間にサイドアップを完成させた。