乙女たるもの恋されろ!


「いえ、結構ですから!」
「そうおっしゃらず。お風邪を召したら一大事ですわ。男性様もそれをひどく心配されています」

「平気です!わたし丈夫なのがとりえで」
「衣装代はもちろん男性様がお持ちになるともおっしゃられています」

「いやいやいや。そんなこと心配してるとか遠慮とかじゃなくて」
「ささ、こちらのフィッティングルームへどうぞ」


高山さんと押し問答している間に、和泉くんは運ばれてきたラックの中からライムグリーンのワンピースを取ると、わたしに強引に押し付けてきた。


「まあ、お嬢様のためにお見立てくださったのですね」
「あの、もう帰るだけだからお詫びにしたってこんなドレスなんかじゃなくて」
「どうぞこちらへ」


高山さんはそういうと、優雅だけど有無を言わさぬ笑顔でわたしをフィッティングルームに閉じ込めた。

いったいなんでこんなことになってるんだろうと、大きな鏡に映るみじめに濡れそぼった自分を見て思う。