「忍ちゃ……」

思わず縋るような声で勢いよく身を反転してそのまま腕の中に飛び込みかけて。

そこに立っているひとの顔を見たら動けなくなってしまった。いまいちばん会いたいと思っていた人とは似ても似つかない人。決壊間近だった目元からすっと潤みが引くほど驚いてしまった。


クラシカルなブリティッシュスーツを着ていた忍ちゃんとは対照的な、遊び心があるブラウンの光沢生地のスリーピース。

それをさらりと着こなす日本人離れした逞しくて圧倒的な存在感の見事なプロポーションに、150センチちょっとのわたしが目を合わせるのには首を逸らして見上げないといけないくらい高い身長。

着ているカジュアルスーツと似合いのゆるくセットされた髪と胸ポケットのチェーンブローチはいかにもお洒落でこなれていた。

こんなモデルさんみたいな男の人、わたしの知り合いにはいない。でも相手はわたしを知っているようでじっと不躾なくらいわたしを見てくる。印象的な鳶色の瞳と、それによく調和した栗色の髪。やっぱり知らないけど、どこかで見たような。わたしもしばらくじっと見返してはっと気付く。


「あの、もしかして……」