「ねぇ忍ちゃん、喉かわいた?わたし飲むものもらってこよっか?」

パーティー会場のいちばん隅っこで、わたしはわたしの王子様である御園生忍(ミソノシノブ)とお皿片手にビュッフェのローストビーフをたのしんでいた。

「烏龍茶がいいんだろ?僕が取ってくるよ」
「え!わたし行くって」

忍ちゃんが苦笑する。

「初実(ウイミ)はこのソースの配合が気になって仕方ないんだろ?いいからさ。じっくり味の検分でもしてなよ」
「あ、わかっちゃった?」
「そりゃね。さっきからソースばっかり舐めてるだろ」

そういうと私を残し、忍ちゃんは颯爽とした足取りで給仕さんのもとへ歩み寄る。ああ、なんてやさしいんだろ。しかも私が味付けが気になって仕方ないことも分かっててくれたなんて。ちゃんとわたしのこと見てくれてるんだなぁとうれしくなってしまう。