「あはは、部長ってばやだなそんな顔しちゃって。こんなのお遊びですよ、お遊び。……ああ。でも、忍ちゃんに恥かせちゃったな。彼女がみんなに笑われるようなアレだなんてきっとすごい恥ずかしいですよね。そうだ、そういえば忍ちゃんどこ行ったかな。すみません部長、わたし忍ちゃん探しに行ってくるんでお先失礼しますね!じゃあまた学校で!」
にっこり笑って急ぎ足にならないようにあえてゆっくり歩く。遠巻きから冷やかす視線がいくつもいくつも突き刺さってくる。
全然わたし気にしてませんけど。だってわたし、自分の分ってものをわきまえてるし。地味で平凡でその程度の人間って分かってるし。こういう扱いなんてべつに普通じゃない?そんな顔してどうにか。
会場はビンゴゲームが始まってまた渋谷くんが楽しそうにあれこれ話しているのが聞こえた。
なんの悪意もない明るい声。読み上げられる豪華な賞品に会場からはこぼれんばかりの歓声が上がる。ほんのちょっと前に起きたことなんてもう誰も気にしてない、誰も覚えてないみたいな、そんな浮かれたパーティーのさざめき。
たまらなくなって、すこしだけ足が速くなってしまう。扉を出たら、もう駄目だった。


