「上野、」
「……もう!ほんっと、すっごい悪趣味ですよね」

気遣わしげな、私より痛み感じてるみたいな声でエリナ部長が呼びかけてくるから、わたしは遮るように殊更明るい声を出していた。

「招待客をピエロにして笑いを取るなんて!これだから桁の違うお金持ちの遊びって庶民のわたしには感覚ついてけないんですよ。ひどいですよ、こういうこと平気で出来ちゃうなんてあのひとたち美人以外は女じゃないどころか同じ人類じゃないくらいに思ってるんです、きっと。わたしは類人猿か!っての」


あはは、と出来るだけおかしそうな顔で笑ってみる。


「こっちだってセレブな皆様方の視界を汚さないように隅っこでおとなしく目立たないようにしてたってのに。なぁんでわざわざいじってくるかなもう本当に……ほんとうに……ね」

いけないいけない。

こんな好奇の視線に晒されているのに、このまま口を開くことをやめてしまったら取り返しのつかないことになる。どうでもいいことを言い続けた。

「まぁ、でも!庶民の分際で憧れの帝宮ホテルのお料理たくさん食べられたから、その料金だと思ってあげますよ!そう思えばむしろ得したくらいかも。オマール海老のひとくちパスタもお野菜のコンソメジュレもおいしかったし」
「上野、もういいよ」


わたしの顔を覗き込んで、部長がぎゅっと手を握ってくる。やめて。そんなことされたら。