『ちがう。そっちじゃなくて』
『え。じゃあ……?』
『あっちの地味な方』


そういってまっすぐこちらを指し示す。地味って。この場にいる地味なのはわたしくらいなもんで。でもまさかそんな。ありえないというか。いやいやないない。


『あいつ。上野初実』


脳内で否定を重ねるわたしに高大は名指しという決定打で止めを刺した。


『え。……っと、上野さん!?』


渋谷くんの声がひっくり返る。でも渋谷くんより、悲鳴を上げる女の子たちよりいちばんびびってるのはわたしなわけで。

「ぅわわわ、わた、わたし……!?」

高大が鼻で笑うほど動転しきった声で叫んでいた。