「時雨は…なんで哉魔屋を知ってるんだ?」
時雨は顔の表情は変えなかった。
「今日知ったんだ。海行ったら、哉魔屋が居て透明にちょっかい出した。そしたら…っ」
時雨の表情が変わった。
「…そしたら?」
怒りに満ち溢れていた。
いや、淡々としている。
逆にそれが怖いくらいだ。
時雨がこんなに怒りを表に出したことあったっけ?
「…哉魔屋弓弦は、透明のことを『殺人鬼』って言ったんだ」
殺人鬼?
あの…透明ちゃんが?
「…透明もな、否定しなかった。俺にも秘密があるように透明にも秘密があったんだ」
「うん。今から俺が話すこと良く聞きなよ?」
俺の言葉に時雨は頷いた。
俺も少ししか哉魔屋弓弦を知らない。
「…哉魔屋弓弦は、結構な女好きとして俺の学校で名が知れてる」
「…うん」
意外そうな顔をした時雨。
「人の女を落とすゲームをして楽しんでるんだ。そして…アケミも哉魔屋に騙された。所詮顔だけなんだって分かったよ」
俺は苦笑い。
すると時雨は重たい口を開いた。
「…哉魔屋は、透明のことが好きだよ。俺に『透明は渡さない』って言ってきたんだ」
なるほど。
哉魔屋は透明ちゃんが好き。
「哉魔屋は眉目秀麗。そしてあの運動神経だ。俺の学校の王子様だ。裏では結構暴れてる女遊びの激しい奴だ」
男からしたら敵しかいない哉魔屋。
でも女は皆アイツの味方だ。
誰もアイツを止められない。
一人の男が立ち上がっても…大勢の哉魔屋ファンから潰されるだけだった。
「…そっか。哉魔屋の過去とか知ってるか?」

