「…バカバカしい」
楽しそうにきゃあきゃあ騒いで前を歩く他の子たちを見ながら、あたしはそう呟いて、来た道を引き返そうと後ろを向く。
すぐにでも歩き出したいのに、どうしても一歩が出なくて、あたしはそのままその場に立ち止まってしまった。
近くの高校に通う学ラン姿の男子たちが、たわいない話をしながら横を通り過ぎて行った。
今日もまた、足が動かない。
動かないんじゃなくて、本当はどこかで動かしたくないんだとわかってる。
動かしちゃいけない。
絶対に。
あたしは黒光りするローファーの足下を見ながら、いつものように、自分にそう言い聞かせていた。
強い日差しは、あまり外に出ないせいで真っ白なあたしの足に、今にも靴下の跡を刻みつけてしまいそうだった。
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