───その空っぽの無い会社だが、お金が無くては生活は出来ないし、お金を得るためには働かなくては行けない。

今日もその第一段階、否、一つの山場と言っていいほどのイベントがある、それは部長の登場である。この部長一つで私の仕事が決まる。ただの外回りからお茶酌みはたまた会社周りの雑草抜きを笑顔でやりきらなくてはならない。

この部長、かなりの曲者である。初老で頭は河童のように禿げ上がり、沸点が良く分からない。喜怒哀楽が見えないそんな人間なのである。

名前は藤巻浩(フジマキヒロシ)部長。その人が登場するまで、私は事務作業をしながら心の準備をしなくてはならない。

一番良いのは一人で外回りである。誰にも構われず、一人で行動し、一人で取引先に出向くだけの作業はとても気楽で仕事に甲乙を付けるのはやってはいけないことだが私はとても好きだった。

逆に私が一番やりたくないのは小春くんとの作業である。彼はとても頭が良い。なんでも理解しなんでもこなすけど人との会話が御存知の通り出来ないと言ってもいいほどやれないのだ。これを面倒見るとなればそれは大変な作業になる。それだけは私としては避けたかった。