家族みんなが、生まれてくるのを楽しみにしていた望が生まれて、3年になる。


本当なら、望が産声を上げる瞬間を、夫と葉菜と一緒に迎えるはずだった。


だけど、それは叶わなかった。


「望。これかぶって」


望の小さな手のひらに、青い帽子を渡す。


望は、素直にそれをかぶった。


「ママ~遊ぶよ!」


元気一杯の望に、思わず、微笑む。


「いいよ。何して遊ぶ?」


すっかり日に焼けて、真っ黒な望は、笑顔で言った。


「シャボン玉がいい!」


無邪気な望を前に、わたしの顔は曇ってゆく……。