「望。いつも言ってるでしょ?シャボン玉はだめ」


「どうして?こーすけくんは、やってるよ!僕だって、できるよ!」


口を尖らせて拗ねる望。
ちなみに、こーすけくんとは、望と同じクラスの子だ。


不機嫌そうな望の顔を見て、わたしは少し自己嫌悪に陥る。


違うんだ。わたしは、別に、望にそんな顔をさせたいんじゃない。


「ママ!絶対シャボン玉がいいの!」


懇願するかのような目を望はわたしに向ける。


その目には、わたしもとことん弱いけど、それを知っていて、望もその目をするんだけど。


だけど、今回は、負けなかった。


「駄目といったら、駄目」


望の目に涙がたまる。


「シャボン玉はやりません」


ごめんね。望。


顔では怖い表情を作りながらも、心のなかでは、しきりに謝っている。


ごめんね。ごめんね。


シャボン玉したいよね。
好きな遊びしたいよね。


だけど、ママはね。
まだ、見れないんだ。


シャボン玉はまだ、見れないよ……。