(……短い間だったけど、いろんなことがあったな…
次期国王もまだ決まってないし、この国はこれからどうなっていくんだろう…
俺も手伝えることがあれば手伝いたいけど、その前に俺にはやらなくてはならないことがある。
フォルテュナ、ずいぶん待たせてしまったけど、これからはあんたを探す事だけに集中するからな!
待っててくれよ!)

心の中に強い決心はあるものの、フォルテュナに関する手掛かりはまるでない…
それどころか、自分が通って来た森さえも、今は跡形もなくなっているのだ。
ここが、自分のいた世界と違う時代だということも、セスは以前から薄々感じていた。



(……どうしよう…
俺はこれからどっちに進めば…)

しばらく歩いた所で、セスは途方に暮れ、不意に立ち止まる。



(あ……!)

漠然とセスがあたりを見渡している時、空から柔らかな光りが降り注いでいることに気付いた。



(なんだ、あれは…?
ジュネ様とラーク様にまたなにかあったのか?)

胸騒ぎのようなものを感じ、セスは光りの元へ走り出した。
光りはセスが近付いて来る度に、少しずつその位置を変えて行く。
まるで、セスを誘うように…



(何なんだ?
どうなってるんだ?
皆、この異変に気付いていないのか?)

空を見上げながら、セスは懸命に光りの後を辿りながら駆けていく。



(あ…光りが!)

不意に光りが消え、セスはその場に立ち止まると両膝に手を置いて上がった息を整えた。
流れる汗を拭いながら、セスが顔を上げた時、あたりはいつの間にか森に変わっていた。



(いつの間にこんな所へ…)

ずっと空を見上げていたとはいえ、確かこんな場所ではなかったはずだと訝しげに思いながら、セスはあたりをきょろきょろと見渡した。
自分がどのあたりから入って来たのかさえわからない。
両脇には木々は密集し、それをかき分けて入ればそれに気付かない筈がない。
そこを抜ければ数人がやっと並んで歩ける程の細い道が続いている。
セスはいつの間にかその細い道の真ん中にいたのだ。



(……おかしいな…
ここは、城に出る前のあの森とはどこか違う。
多分、別の森だ…俺はまたおかしな所に連れて来られたってわけか…)

セスは、諦めの溜め息を一つ吐いて、そのまま前を向いて歩き出した。