「シスター・シャーリーは戻られましたか?」

ギリアスを待ち構えるようにして、キルシュが声をかけた。



「あぁ、無事に戻って行かれた。」

「ギリアスさん…実は、僕……最近、ちょっと気になる噂を聞いたんですが…」

キルシュは俯きながら、どこか言いにくそうに小さな声で話し始めた。



「どうしたんだ?
どんな噂なんだ?」

キルシュの隣に座っていたライアンが、キルシュに問いかける。



「それが……」

「何なんだよ!早く言えよ!」

気の短いケネスの苛立った声に、キルシュは少し怯えたような視線を移すと、心を落ちつかせるように大きく息を吸いこんで、ようやくゆっくりと話し始めた。



「実はね…
シスター・シャーリーが、色仕掛けで大臣に取り入ったって…
シスター・シャーリーは、大臣が国王になった時には重要なポストに就く事が決まってるって…」

「キルシュ!馬鹿なことを言うな!
シスター・シャーリーは修道女だぞ。
そんな者が色仕掛けだなんて…」

「そうだ!それに、大臣の手先になったのなら、俺達の所に情報を持って来るわけがない…!」

セスやケネスは、キルシュの話に激昂して反論した。




「……シスター・シャーリーは間違いなく僕らの味方だ!
僕らを裏切ることはない…!
……でも……
もしかしたら、彼女は情報を掴むために……」

その場にいた男達は、驚いたような顔でライアンをみつめた。



「そ…それじゃあ、そのためにシスター・シャーリーは、自分の身を犠牲にして…」

「馬鹿なことを言うんじゃない!
そんなものは根も葉もない噂だ。」

「だけど、ギリアスさん…
それならなぜシスターシャーリーは、急に国王に会えるようになったのですか?
考えてみれば、彼女は誰もが知らないことを知りすぎている。
それは、彼女が大臣と親しい関係にあるからではないんですか?」

「違う!そうではない。
彼女は、大臣に忠誠を誓うふりをしただけだ。
ちょうどそんな時に、国王が搭へ移された。
神父様は、お若くはない。
毎日、あの搭へ上ることは体力的に不可能だったのだ。
だから、運良くシスター・シャーリーがその役目に抜擢された。
ただそれだけのことだ。」

ギリアスは、出来る限り平静を装い、静かな声で皆を諭すように話した。