「それと…皆様もご存知のことと思いますが、今月末にはこの国の建国記念日があります。
その時に、大臣は各国の要人を招き、舞踏会を催すつもりのようなのですが…おそらく、その場で大臣は次期国王に自分を指名させようと考えているのではないかと思うのです。」

「なんと…大臣の奴、そんなことを…!」

「ギリアスさん…急がなければ!
なんとかそれまでに国王を…
搭ならば、強行突破出来るのではないでしょうか?」

「そうです!
武器は少ないですが、狭い通路での戦いならこちらの人数が少なくともなんとかなります!」

ギリアスは眉間に皺を寄せ、何かを考えるように俯いた。



「兵士はおそらく搭の下と最上階に配備されているのだろうと思うが…」

「はい。下に二名、最上階の部屋の前にいつも二名の兵士がいます。」

ギリアスの話の途中でシスター・シャーリーが説明を加えた。



「強行突破は出来ないことはないだろうが、騒がれたら国王を下へお連れする前に搭を包囲されてしまうぞ。
あの長い搭の階段を国王を背負って下りるのに最低二人は必要だ。
つまり戦えるのは四人…
早くお救いしたいのは山々だが、あまりにも無謀な行動だ。
だから、舞踏会の前の方が良いだろう。
おそらく、数日前…遅くとも前日に国王はまたあの地下牢へ移されると思う。」

「だけど…それまでに国王の身にもしも万一のことがあったら…」

ライアンはそう言って、顔を曇らせた。



「そのことなんだが…
シスター・シャーリー、国王になんとかしてそっと伝えてほしいのです。
ジュネ様とラーク様があなたに連絡を取りたがっていると…」

「ジュネ様とラーク様が!?」

ギリアスはゆっくりと頷いた。



「国王を騙すのは心苦しいことですが、今はなんとかして国王に生きる気力を取り戻していただきたい。
ルシアン様がいらっしゃらない今、それが出来るのはお子様達だけです。
お二人のことを持ち出せば、きっと国王は生きる気力を回復される筈…」

「しかし…シスター・シャーリーに嘘を吐かせるなんて…」

「……私なら大丈夫です。
国王のお命をお救いするための嘘なら……きっと、神様もお許し下さる筈ですわ。
いえ…たとえ、許されなくとも…」

そう言って、シスター・シャーリーは唇をきつく噛み締めた。