「そう出来るなら、これ以上の栄光はございません。
しかし…勝手を申すようですが、私はただ擁護されるだけの女にはなりたくないのです。
私は、あなた様のためになにかしたい。
そうすることで、私はあなたへの愛を証明することも出来ますし、自分への自信にも繋がります。
……そうだ!大臣様!
私を密偵としてお使いいただけないでしょうか?
城の兵士達が逃げ出し、いまだに捕まっていないと聞いております。
兵士が助け出されたということは、そやつらは神父様や国王をも救出しようと企てているのかもしれません。
何食わぬ顔をして城内に潜んでいるかもしれないのです。
私なら、シスターとしての信用があります。
あやしいと感じる者に罠をかけることも出来ましょう。」



「確かに、そうだな…」

咄嗟に思い浮かんだ計画に対する大臣の反応は悪いものではなかった。
このままうまくいけば、神父や国王と連絡を取る事も出来、修道服を脱ぐこともないとシャーリーは安堵した。



「……まさか……」

大臣の細い灰色の瞳が、シャーリーをみつめてきらりと輝く。



「おまえは、神を裏切るのがいやで…シスターをやめたくなくてそんなことを言っているのではあるまいな。」

「め、滅相もございません!
私は、シスター等には何も未練もございません。
私は、ただ、あなた様のために……」

必死で訴えるシャーリーを、大臣は鼻で笑う。



「そうか、おまえの気持ちはよくわかった。
ならば、その愛と忠誠の証を見せてもらうとしよう。
その気持ちに嘘偽りがないのなら、今夜、わしの部屋に来るが良い。」

「こ、今夜……!?」

「そうだ…何か都合でも悪いのか?」

「わ…私は、そのようなことは初めてなので…その……心の整理が……」

しどろもどろになって言い訳するシャーリーに、大臣はくるりと背を向けた。



「話は終わりだ。
来るも来ないも、おまえの自由だ。
さぁ、下がれ!」

シャーリーは、その言葉に従い、放心したように部屋の外へ歩き出した。