「私は、大臣に直接お会いしたことはありませんが、この城では今なにかとても恐ろしいことが起きていて、その元凶となっているのはその大臣なのではないかと思っています。
神父様とロザンナ様はどこかに閉じ込められており、ロザンナ様はお身体を壊されているようなのです。
それも、監視の目をかいくぐり神父様からほんの一言聞いただけで、詳しいことは何もわからないのです。」

「やはり、神父様達は監禁されているのですね。
しかし、なぜ、あなたは大臣のことをそのように考えてらっしゃるのですか?」

「それは…人々に対する仕打ちを見ていれば、自然とわかります。
神父様達を監禁すること自体、考えられないことですが、ただこのあたりを通りがかったというだけで捕えられ、拷問を受けた者達を何人も見ました。
皆、酷く痛めつけられたようで、痛々しい怪我をしていました。
ですが……ロジャーさんのように酷い怪我をされている方は初めてです。
あんなことを指示する者が良き者であろうはずがありません。」

シスター・シャーリーは、いささか興奮したようにそう話した。



「シスター、俺達の仲間の中で拷問を受けて死ななかったのはあいつだけなんだ。
他の仲間は皆…
その上、死んだ後はそのまま水路に流されたんだぜ!
まるで、ごみみたいにな!」

ケネスは悔しさをぶつけるように、地面を拳で殴りつけた。



「そんな恐ろしいことを…!!」

シスター・シャーリーは、両目を固く閉じ両手を組んだ。



「……そんな奴だから、国王にもいつどんなことをしでかすかわからない。
だから、僕は国王を助けるためにここへ来ました。
僕にそんな大それたことが本当に出来るかどうかはわからないけど…それでも、何もしないでいることは出来なかった。
それで、セスの力を借りて、まずは兵士達を助けたんです。」

「そうだったんですか…」

シスター・シャーリーは、小さな声でそう呟くと、何かを考えるように俯いた。



「あ、皆、これを…
これだと、何かあった時に、庭師のふりをしてこの部屋の外に出られるだろう?」

ライアンは白いシャツと大きなエプロンを差し出した。



「それと、これを…」

ライアンは、今度は三本の短刀を差し出した。



「出来ることなら、こんなもの使いたくはないけど…」

「あんた達はこんなもの使わなくて良い。
これは俺達が使うよ。」

そう言いながら短刀を手に取ったのはケネスだった。
ケネスは、他の兵士達に残りの短刀を手渡した。