「すみません!
ロジャーを…こっちへ!」

慌しく駆けこんで来たライアンが、外を指差す。



「ロジャーをどうするんだ!?」

尋ねながらも、ギリアスと兵士はライアンに言われるままにロジャーを外へ運び出した。



「こ…これは!」

外には粗末な柩が置かれ、その脇にシスターとキルシュが立っていた。



「シスター…これは一体…」

「ギリアスさん、お許し下さい。
この方を外のお医者様の所へ連れていくにはこの方法しかなかったのです。
さ、早く!」

ギリアスは、戸惑いながらロジャーを柩の中に寝かせた。
ロジャーの顔はまさに死人のようで、そのことがギリアスを余計に不安にさせたが、今はこのシスターを信じる他ないのだと何度も自分に言い聞かせる。
ライアンとキルシュによって運ばれていく柩を見送りながら、ギリアスは追い掛けたい衝動を必死に堪えた。



(ロジャー…どうか無事で……!)







残された兵士とセスは、まんじりともせず朝を迎えた。
外から小さく聞こえる小鳥の鳴き声で夜が明けたことを感じられただけで、隠し部屋の中は変わらず薄暗いままだ。



「兵士長、彼らは大丈夫でしょうか?」

皆が聞きたかったことを、ケネスがついに尋ねた。



「……もちろんだ。
彼らは必ず戻って来る。
待とう…それを信じて…」

ギリアスのその低い声を最後にあたりはまた静寂に包まれる。



「ギリアスさん、朝食でも食べましょうか?
キルシュがもってきてくれたものが…」

セスが話しかけた時、扉の開く音がして息を切らせたキルシュが走り込んで来た。



「キルシュ!どうだった!?」

「あの人は、無事にお医者さんの所に運べた…
なんでも血を入れるとかで、シスターとライアンが血を採って…」

「血を…!」

大きく肩で息をしながら、キルシュが話す。
シスターとライアンはそのまま医者の所に残り、キルシュは仕事があるため先に戻って来たのだという。



「まだ危ないみたいだけど、今の所はなんとかもってる状態だよ。
ライアンは、今夜遅くにシスターの手引きで戻って来る。
シスターもまたここへ来てくれることになってるよ。」

「そうか、ご苦労だったな。
本当にありがとう!」

「じゃあ、僕は仕事があるから…
また夜に来ます。」

そう言うと、キルシュはまた外へ向かって走って行った。