「ここは……?
あなたはこんな所で何をなさってるんですか?」

「お願いです、シスター。
おかしなことは決してしません、僕を信じて下さい。
みつかっては大変ですから、詳しい話は中で聞いて下さい。
あ、足元に気をつけて下さい。」

シスターが逃げられないようにするためなのか、キルシュはシスターを先に歩かせた。



「まぁ…これは…!!」

若いシスターは、横たわる瀕死のロジャーを見て口許を押さえた。



「シスター、よく来て下さいました。
感謝致します。
私は兵士長のギリアス……実は、つい先程まで地下牢に投獄されていました。
そして、この者達は私の部下達です。
皆、同じように投獄されていました。」

「それでは、あなた方は…!!」

「その通りです。
……ですが、私達は間違ったことをしたとは思っていません。
間違っているのは大臣の方です。
この者は、牢で恐ろしい拷問に遭い、この有様に…
私には彼を救う手だてがみつからず、シスターのお力をお借りしたく…」

ギリアスの話す間にシスターは周りを見まわし、ライアンを指差した。



「あなた、そして…キルシュさん。
私に着いて来て下さい。」

そう言って、外に向かおうとしたシスターの肩をギリアスが掴む。



「シスター、何をなさるおつもりです!?」

シスターは振り向き、真っ直ぐにギリアスの瞳を見据えて言い放った。



「急がなければなりません。
この方を救うにはゆっくりはしていられないのです。
ギリアスさん、私を信じて下さい。」

ギリアスはしばらくシスターの瞳をみつめ、やがて静かに手を離す。



「……わかりました。
シスター、どうぞよろしくお願いします!」

ギリアスはシスターに深深と頭を下げると、ライアンに向かって頷いた。



「ライアン、キルシュ、どうか、頼んだぞ!」







「ギリアスさん、本当に大丈夫なんですか!?
シスターのことを信じてしまって…
もしも、あのシスターが、なにか良からぬことを考えていたら…キルシュとライアンではひとたまりもありません。」

「セス…彼女の目に嘘はなかった…
私の勘を信じてくれ。」

「しかし……」

他の兵士は、異を唱えなかった。
それほどギリアスを信頼していることに、セスは少なからず驚いた。



(これが兵士ってものなのか…)