「ギリアスさん、馬鹿なことは言わないでくれ。
俺達は自分の身くらい自分で守る。
あなたこそ、無理しないで下さい。
皆も、監禁中はろくなものも食べさせてもらえなかったんだろ?」

「その通りだが、食べ物くらいなら我慢は出来る…
……一番きつかったのは、眠れないことだ。
奴らは夕食後、俺達の仲間を一人ずつ拷問にかけた。
酒を飲みながら、馬鹿笑いをしながら、な…
仲間達の叫び声が、今でもこの耳から離れないんだ。」

「叫び声がやむのは、たいがい仲間が死んだ時だ…
ほとんどの者はその日のうちに死んだ…
三日持った奴はいない…
ロジャーも今夜拷問を受けたらきっと死んでただろう…
それがわかっていながら、俺達は、何も……
何も、出来なかったんだ…!!」

兵士達は口々に牢での辛い日々を話し、あたりには、兵士達のすすり泣く声が切なく響く。



「だから、俺達もロジャーには助かってほしいんだ!
あんた達のことは俺達が命懸けで守る…
約束する!俺達はこんな所じゃやられはしない!
国王を助け出す!
……だから、どうか今度のことだけは許してくれ…!」

五人の中で一番年若く見える兵士が、涙を流しながら二人に向かってそう訴えた。
ライアンは兵士に近付くと、その手をそっと取り、両手で固く握り締めた。



「皆で力を合わせて国王を助けよう!」

「ライアンさん……」

兵士は、ライアンに向かって何度も頭を下げる。
その光景に、セスは頬に流れる涙を拭った。









「……遅いな。」

ギリアスの低い声が、あたりにいやな緊迫感を広げた。



「兵士長、僕はどちらを守りましょう?」

「両方向から攻められることはないと思うが、万一の場合には私がこちらを守る。
おまえは外の方を頼む。」

「はっ!」

ジョーイは、ギリアスに向かって敬礼をした。

キルシュが出てから、思いの外時間が経っていた。
キルシュがどんな口実を設けたのかはわからないが、それがうまくいかなかったのか、それとも、怪しまれ、通報されてしまったか或いはすでに捕まってしまったのか…
何もわからない中、ただ、緊張感を募らせながら、皆はこの次に起きる事態に備え、身構える。

その時、不意に外の扉が開く音が小さく響いた。