「すまなかったな、フォルテュナ。
よく考えたら真っ暗な部屋に入って待っててくれっていうのもおかしな話だよな。
……フォルテュナ…?」

部屋の中から、返事のないことを訝しく感じたセスは、灯かりを付けたランプで部屋の中を照らし出した。



「フォルテュナ…!
どこだ?」

さほど広くもない部屋の中は静まり返り、そこに誰もいないことはセスにもすぐにわかった。



セスは、再び外へ向かい、フォルテュナの名を呼んだ。
しかし、あたりに人の気配はなく、遠くで物悲しい梟の鳴き声が聞こえるだけ。



(どこに行ったんだ、フォルテュナ…)



セスは、混乱した頭を抱えながら部屋の中に戻り、カーテンを開け、長椅子に腰を降ろす。



(俺がスコットさんの家にいたのは、せいぜい10分だ。
友達を待たせてることは言ったから、無駄口は叩いちゃいない。
そんな短い間に、一体、何があったっていうんだ…)



どう考えてもわからない…
スコットの家からセスの家までは目と鼻の先だ。
その先にあるのは、誰も住んでない廃屋が二件と、ロジェという老人が一人で住む家があるだけだ。



(俺とフォルテュナの関係はうまくいってた。
奴が黙って突然いなくなるなんてことはない筈だ。
じゃあ、やっぱり、フォルテュナの身に何かがあったってことか?
……そうだ!もしかして、間違えて廃屋に…?
いや、そんなことはない。
扉の鍵は開いてたんだから、フォルテュナはここに来たのは間違いない。
それならここで何かがあったってことか?
……いや、しかし、ここは何一つ荒らされてはいない。
俺が出て行った時と、何ひとつ変わっちゃいない。
何かがあったらその痕跡があるはずだ…)

考えれば考える程、わけがわからない。
セスは、棚から小さなボトルを取り出すと、そのままそれをぐいっとあおった。



(もう一度、最初から考えてみよう…)

セスは立ちあがり、玄関へ向かった。
扉を開け、中の様子を見る。



(そうだ…あの時はまだここは真っ暗で…)

セスは、ランプの灯かりを消し、外へ持ちだした。
そして再び扉を開け、部屋の中をのぞきこむ。



(あ、そうだ。
カーテンも閉めてたんだ。)

セスはカーテンを閉め、もう一度最初から同じ動作を繰り返した。



(…暗いな。
扉を閉めたら真っ暗だ。
こんな状態で中に入るだろうか?
俺なら、外で待つ……外…?)