「……そういえば、キルシュは厨房で働いてるんだろ?
国王や兵士の食事はどうしてるんだ?
運んでいかないのか?」

「それは、大臣の部下が二人で取りに来る。
だから、どこにいるのかはわからないんだ。
ただ……」

キルシュの言葉が不意に途切れた。



「キルシュ、どうかしたのか?」

「……僕は担当してるわけじゃないからはっきりとはわからないけど、ちらっとのぞいた限りでは食料はどんどん酷いものになってる。
それに量も少なくなってるよ。」

「……畜生!
反抗できないように弱らせるつもりだな!」

「急がなきゃならないな…」

三人は、あらためて救出には猶予がないことを実感した。



「ライアン、地下には牢は何ヶ所あるんだ?」

「牢は二ヶ所だが、それ以外に人を閉じ込めておける場所がいくつかあるんだ。
あんたならどう思う?
牢に入れるか、それとも普通の部屋に閉じ込めるか…」

「そうだな…そもそも、なんで牢屋が二ヶ所もあるんだ?」

「それは…一つは比較的軽い罪を犯した者を入れておく所…俺達がいたあそこだ。
それと、もう一ヶ所は、重い罪を犯した者を入れておく場所…たとえば王の命を狙ったとか、城に火をつけようとしたとか…拷問の部屋が併設された忌まわしき牢だ。」

「……なら、兵士はそこにいると考えた方が良いんじゃないか…?」

セスの言葉に、ライアンとキルシュは言葉にならない驚きの声を上げた。



「で…でも、元はといえば、同じ城で働いていた兵士だぜ。
仲間ともいえる者達をそんな所に閉じ込めるか?」

キルシュが震える声でセスに問いかける。



「だけど…その大臣っていうのは君主を幽閉するような奴なんだろう?
しかも、次々に国王を支持する者を殺したり、町を出歩いただけで拷問をするような奴なんだろう?
そんな奴が、国王支持の兵士達に情けをかけるとは思えない。」

二人は、セスのその言葉に沈黙したままだった。

重い空気の流れる中、しばらくしてライアンがようやく口を開いた。



「セスの言う通りかもしれない。
とにかく、まずはそこへ行ってみよう。
突破するのは難しいが、幸い人気の少ない場所なんだ。
それは利点かもしれないな。
今、牢の内部を描くからな。」

そう言いながら、ライアンは地面の土に指でなにかを描き始めた。