「だけどな、セス!
お二人が魔物だなんてことは断じてありえない!
ましてや、ラーシェル様やルシアン様が魔物と手を組むなんてこと…!
ターカスは恐ろしい奴だ!
僕は、あいつこそが魔物の手先じゃないかと思ってるんだ!」

ライアンが興奮したように熱く語る。



「……そうか。
俺にはよくわからないが…話を聞いた限りでは確かにその大臣はなんだかあやしい気はするな。
まだ何もわかってない段階で、国王を監禁したり、側近を殺すなんて、やることがめちゃむちゃだ。」

「その通りだ。
今、この国では戒厳令が布かれ、人々の外出もままならない。
そして、ちょっとしたことで国民を魔物の手下だと嫌疑をかけてしょっ引いてきては拷問にかけるんだ。
拷問にかけられた者達は、自分達が魔物の手下でないという証明のため、ターカスに忠誠を誓わされる。」

「今、この国はそんなことになってるのか!?」

「そうだとも。
元々は、ラーシェル様を信じる者の方が多かったんだが、そんな話が広まってから人々はターカス派に移って行った。
そうでないといつ自分の身の上に火の粉がふりかかるかもしれないからだ。
現実に、ラーシェル様を助けようと行動を起こした者の中には、家に放火された者もいるんだ…」

「そんな……!」

セスは言葉を失った。
突然巻きこまれた現実に戸惑うばかりで、まだピンと来ていなかったこの国の大きな問題が、ようやくセスの頭にも身近に響き始めた。



「セス……僕を手伝ってもらえないだろうか?」

「えっ?手伝うって…何を?」

「僕は……ラーシェル様をお助けするためにここに来た。」

「な、なんだって!?」

ライアンの言葉に驚き、セスは思わず自分の声が大きくなってしまったことに気付き慌てて口許を押さえる。



「君が驚くのも無理はない。
でも…僕は、感じたんだ。
君なら、僕のこの申し出を受けてくれるんじゃないかってね。
どうだろう?
……無茶を言ってるのはわかってる。
だけど…この国のためなんだ…
どうか、真剣に考えてみてほしい。」