「森だと?
このあたりには森などない。
どうやって関所を破った?
一体、何が目的でここにやって来た!?」

「そ……そんな馬鹿な…
だって、俺は確かについさっき……」

セスは必死に事情を説明しようとするが、セス自身にも今の状況が飲みこめていないため、はっきりとした話が出来ないでいた。



「おい!もしや、こいつも魔物の仲間なのではないか?」

もう一人の兵士がそう言いながら、セスを睨み付けた。



「なるほど……そういうことか。
よし、こいつも牢屋行きだ!」

「や、やめろ!」

セスは、両脇を兵士に抱えられるようにして、城の中へ連れ去られた。



(ここは…そうだ…あの中庭…間違いない!
そう…俺とフォルテュナはあの窓から中に入ったんだ!)

セスは少し前の記憶を思い出す。
フォルテュナと一緒に搭に上ったあの日のことを…
その時とは違い、窓ガラスは破れてもいなければ、建物も壊れてはいない。
だが、位置や造りはあの時と同じだった。
少し回り込んだ所に扉があり、セスは引きずられるように城の内部へ連れて行かれる。
搭とは反対側へ続く長い廊下を進み、突き当たりから長い階段を降りた先に湿った空気に包まれた牢屋があった。



「また新入りか。」

「あぁ…次から次によくいやがるもんだ。」

兵士はそこにいた牢屋番の男にうんざりしたように呟いた。



「じゃあ、一番奥の牢にするか…」

牢屋番の兵士が鍵を持って先を歩き、一番奥の牢の鍵を空けた。



「おまえの番が来るまで、ここでおとなしくしてろ!」

背中を突き飛ばされるようにセスは牢にぶち込まれ、牢の鍵が再びかちゃりと閉じられた。