猫の世界と私

結愛は未来を見つめる。
未来もまた結愛を見つめていた。



「結愛は彼のことを“瑛祐”って呼んでたんだね」

「……う、うん…」



悲しげな表情が見える。



「未来は?何て呼んでたの?」

「私は…」

「?」

「瑛祐…君…」

「…そっか…」



付き合い始めてからそんなに期間は経っていないのか、遠慮がちに未来は瑛祐の名前を君付けにして呼んだ。



「ホントは“瑛祐”って呼び捨てしてみたかった」

「…できなかったの?」

「うん…呼ぼうとはしたの。けど、いざ声にしようとすると声が出なくなっちゃって…」

「恥ずかしかったんだ」

「それもある」



思い出し笑いのように、小さな笑みが見られた。
先程までの悲しげな表情とは違う、幸せな表情。
そんな未来を見て、結愛は微笑む。