「未来、教室の場所分かるの?」

「全く分からないよ。だから案内して、って言ったの」

「あ、そうか…」

「一応こっちかな、って勘で動いてるだけだよ」

「勘…って…まぁ、合ってるけど…」

「じゃ、こっちでいいのね?」

「うん、この先に階段あるから、そこから三階まで上がって…」

「分かった」



校舎の中に入り、教室に着くまでは暗闇と言っていい程視界が悪く、足場も悪い。そんな中を未来は猫を抱いたまま、躓くことも怯むこともなく前へ進んでいっている。

怖くないんだろうか。

暗くて、先が分かりづらいこの状況を、なぜ未来は進むことができるんだろう。

結愛の心の中に現れる感情。
先に進んだ未来の姿はもう見えない。
足音が微かに聞こえるだけで、結愛は一人で歩いているのと同じことだと、不安で壁に手を着きながら歩いていた。


一段一段階段を上り、やっと三階に辿り着いた時には、未来は既に教室の中に入っていた。


休む間もなく、結愛は教室へ向かって歩く。
暗闇に差し込む光が一箇所から漏れている。その場所が、結愛にとって始まりの場所である教室だ。

この不安な状況から逃れたい。

そう思い、結愛は早足で教室へと向かった。