猫の世界と私

「ここが入口?」



確信が持てない結愛は、出入り口と思われる場所を指差し、未来に質問した。
視線を感じた未来は、笑顔で頷き、結愛と共に水族館の中へ入る。


無人の改札を抜け、展示物や水槽が見える場所を歩く。
何もいるわけがないと思ったが、軽快な水の音を立てながら、水槽の中には魚がゆったりと泳いでいた。

小さな魚、触れるコーナーにいるヒトデ。ペンギン、ラッコ。
大きな熱帯魚に、深海魚。

足を進める度に、様々な魚と出会う。


猫たちがいた世界とは全く違う世界がそこにあった。


暗い通路から見える大きな水槽が、マリンブルーの色を輝かせながら足元を照らしていた。
その中を泳ぐ魚たち。

自分たち以外に人がいない、静かなホールの中、幻想漂う水槽の魅力は絶大だった。


水槽の前で足を止め、結愛と未来は、口を閉じることも忘れ、その世界に見入っていた。



「綺麗…」



未来が呟く。
結愛もその言葉に頷いた。