猫の世界と私

ザァァ…


波の音が新鮮に聞こえる。
音があまりしなかった世界にいたからか、目の前にある波の動きと共に聞こえる音が珍しく思えた。


濡れた砂の色に、流れていく砂たち。


動いている、生きている、そんな感じを思わせてくれることに結愛は嬉しく思い、そっと足を波で濡れた砂の上に置いた。
途端に襲う波が足を濡らす。



「冷たい…」



意外だった。
冷覚を体験するとは結愛自身思っていなかった。

人がいないだけで、この世界は生きている。


ただ海があるだけじゃない。
触れた海は冷たかった。


きっと、ずっと照らしている夕日も温かいんだろう。


結愛の視線が動く。
今にも沈みそうな夕日は、ゆらゆらとした光は動いているが、そのままの状態で止まっている。


まるで、その時を終わらせないように。


そう感じた時、突然結愛の脳裏に何かが過ぎった。