猫の世界と私

「なんで…どこに…」



ここは不思議な世界。
電車がなぜ動いているか、ということには疑問が沸かない。

結愛の中には、以前の世界にはいたはずの人物が今どこにいるのか、ただそれだけだった。



「もしかして、今度は一番後ろの車両にいるのかな…」



少しの希望を胸に、結愛は振り返り、足早に一番後ろの車両まで歩き始める。
揺れにも負けず、早足で向かう結愛の表情は必死だった。

けれど、その希望はすぐに絶望に変わった。



「誰もいない…」



どの車両にも人はおらず、結愛は深い溜息をつくと、そこに座り込んだ。

また一人。

今までのことで慣れているはずなのに、少しの希望を見てしまった今、その現実が心を抉る。
泣いて、叫んで、訴えたとしても、それはただの独り言にしかならない。


後から襲う虚しさが待っている。