猫の世界と私

色々と記憶は残っている。
けれど、いつも気が付くと何かを忘れていた。



「瑛祐…」



結愛は小さく呟く。

-結愛…―


そう瑛祐が結愛のことを呼んでいたことは覚えている。


―笑って…―


そう言ったことも覚えている。
顔のイメージは白い霧が掛かったような感じがすることは以前と変わらない。



「声…そう…声…」



全てを思い出せないことは分かっている。
これど、声について何かを思っていたはずだった。何かを思っていたことだけは覚えている。


声…どんな声…


それは思い出せない。