猫の世界と私

状況が一転してからどれだけの時間が経ったのか、結愛の足に床の感覚が戻った。
自分自身が立っていることが理解できる。

香る風。
やすらぐ風。

開こうとする瞳から見える朱い光。


これは忘れることなく覚えている。
結愛はゆっくりと瞳を開いた。


はためくカーテン、朱く世界を染める夕日。
そして…猫…

自分自身…


結愛は始めの場所に戻ってきたことを自覚した。


後少しだったのに…
後少しで見れたのに…


なぜ、またここに戻ってきたのか。

結愛の中には“戻ってきた”という感覚があった。
以前なら“再び迷い込んだ”と思っていたはずなのに…きっと、新しく、違う世界に足を踏み出したからかもしれない。


結愛は考え込み、以前のことを思い出していた。