猫の世界と私

だから今、懸命に負けないように動くことで精一杯だ。
そして、ようやく先頭車両にたどり着き、運転席へと近づく。



「あ…!!」



誰かがいる。

運転室のドアには内側から鍵が掛かっており、ロールカーテンで視界が遮られている。
けれど、時折揺れて見える隙間から、誰かがいることが伺えた。


男の子か、女の子か、どちらかは分からない。
もしかしたら探している大切な人なのかもしれない。


自分以外に見当たらなかった人間が今目の前にいる。


そう思うと、今目の前にいる人物に会いたくてたまらないのに、ドアが行く手を阻む。
けれど、この鍵のかかったドアが邪魔だ。

ガチャガチャと音を立て、開かない扉の取手を引っ張る。


当然、開くわけがない。
それは分かっている。

ただ、今の望みは、相手が自分の存在に気付いてくれること。


ほんの少し、本当に少しでいい。