猫の世界と私

道路には車一台動いてもなく、閑散としていた。


なのに、今電車は動いている。


なぜ?


結愛の中に期待が膨らむ。
ここは不思議な世界。

何が起こったとしても、あまり驚くようなことはない。

けれど、誰もいない状態で乗り物が動くことが不思議だ。
もしかしたら、誰かが運転室にいるかもしれない。

そんな期待が心の中にあった。


電車の揺れにも負けず、結愛は足を進めた。

小ぢんまりとした駅にも止まる電車、そんなに車両があるわけではない。

けれど、やっと新しい世界を見た結愛にとって、この揺れは新鮮そのもので、慣れるものではなかった。
電車が揺れる度に体も揺れる。
ガタンガタンとなる電車の音。
新鮮だけど、初めてではない気はする。

けれど、記憶がない。