猫の世界と私

溜息をつき、結愛は切符を買うこともなく改札口を通った。
普通なら、こんなことをすれば警告音が響き、行く手を阻まれる。

けれど、ここは不思議な世界。

そんな警告音がなることはない。


無音のまま改札を通り、駅のホームへと足を進める。



「車すら動いてないのに、電車が動くわけないよね…」



そう思った時、突然結愛の視界に電車が現れた。
存在を示すように汽笛をならして線路を走り、ゆっくりと速度を落とすと、結愛のいる駅のホームに止まった。

機械音を鳴らし、結愛は開いたドアから乗り込んで、車内を見渡した。

結愛が入るのを確認したかのように、ゆっくりと電車の扉が閉まり、動き出す。


時折揺れる車内で、結愛は手摺りを持ちながら先頭車両まで移動した。

期待はしていなかったが、乗り込んだ電車内にも人は誰もいない。それは、今までいた場面でもそうだった。
だからこそ、あまり疑問は持たない。