猫の世界と私

けれど、それでいい。


今は、彼に会うことが大事。


結愛の足が自然と早くなっていく。
車も通らない広い道路を一人、真ん中をひたすら歩く。

途中斜めに歩いても、誰も何も言わない。

いわば、貸し切りの世界を結愛は歩いていた。


そして再び結愛は、ふとしたことで首を傾げる。



「こっちに行かなきゃいけない気がしたから何となく歩いてきたけど…何で私…知っているのかな…あの教室から出たことなかったはずなのに…」



ふと、自分が進むべきだろう道を見る。
遠くを見つめるように視線を送り、結愛は勘に従って、その建物に向かった。


次の場所は駅。


駅といっても、その駅は小ぢんまりとして、改札口も二つしかない。
その改札も入口出口との兼用で、実質、入口と出口の一つずつとなっていた。

切符を販売している券売機も一つしかなく、横には駅員室に繋がっている連絡口がある。


結愛は、誰もいないことは分かっているが、駅員室の中を覗き込んだ。
駅員室の中には机や、棚が並び、普通の光景がある。
普通に物は、そこに存在していた。

ただ、そこに人がいないだけ。