猫の世界と私

そう言って、瑛祐は未来との会話を終わらせた。
これ以上話すことはない。
それは未来にとっても同じことだろう。

不服そうな顔で、未来は教科書を広げ、講義の準備を始める。

そして、徐々に人は集まり、いつものメンバーが集まったところで講義が始まった。

瑛祐はノートを取るが、未来が言ったように、いつも外を眺めている。
今日もそれは変わらず、いつもと違う事と言えば、未来が時折瑛祐を見ていることだった。


仲間と過ごす日々は悪くない。
けれど、時折深く心に入り込まれているようで不安になる。
思い出の中に留めた結愛を、現実に引きずり出されたくはない。

だからこそ、少し距離を置いて付き合っていた。

そこを未来に見抜かれ、怒られる形になってしまったが、今の距離を縮める気はない。
瑛祐は今のままで大学生活を続けた。



「いつまで瑛祐君は距離を置き続けるの?」



大学に入って初めての秋を迎えた瑛祐は、メンバーに誘われた食事会を断っていた。
そんな瑛祐の前に立ちはだかり、眉間に皺を寄せた未来が、はっきりとした言葉を瑛祐に投げかける。

返事に困った瑛祐は、取り繕った笑顔を返し、ごめんと手を合わせた。

そして、何も言わずに未来を通り過ぎ教室を出た。