「瑛祐、すっごく綺麗…」

「俺もそう思った」



心が洗われるとはこのことを言うのかもしれない。
瑛祐は、心がスッと軽くなっていくのを感じた。



「ねぇ、瑛祐。冬休みになったら水族館行こうよ」

「え、冬に?」

「冬だからこそだよ。館内はそんなに寒いわけじゃないし、イルカのショーだってきっと楽しいよ」

「行きたいんでしょ?」

「うん」

「分かった、行こう」



紅葉の景色に季節を感じ、心が軽くなった瑛祐と結愛は、再び坂を降り、駅に着くと、帰りの電車に乗り込んだ。

気付けば夕方を迎え、夕日が電車の窓から差し込む。

茜色に縁があるな、そんなことを思いながら瑛祐は電車の背もたれにもたれかかる。
同じように結愛も背もたれにもたれかかると、自然と置かれた瑛祐の手の上に結愛の手が置かれた。
自然と触れる手と手。


二人は夕日から視線を逸らすことなく、指と指を絡ませて手を繋いだ。


静かに時が流れ、電車の音が心地よく響く。
瑛祐と結愛は、それぞれの駅に着くまで何も話すことなく、手を繋いだまま時間が過ぎていくのを感じていた。