猫の世界と私

「やっぱり、今日は多いよね、人」



興味津々の顔で結愛は後ろを見ていた。



「そりゃ、これだけ天気がいいんだったら誰でも行くでしょ」

「そうよね。何だか、もうすぐ海なのに待ち遠しくなっちゃった」



人の多さに触発されたのか、結愛のテンションは高い。
輝くような瞳で笑顔を向けられると、瑛祐のテンションも高くなっていく。

最高の思い出になると、瑛祐は予感した。

到着したバスの中には既に人はいっぱいで座るところもなく、瑛祐と結愛は運転席近くに立ち、手すりを持ち体を支える。
そこから見える景色は新鮮で、何度か家族で来たことがあったはずだが、初めて見た景色のように感じていた。



「あ、そっか。遊園地近かったね。瑛祐は行ったことある?」

「ううん、俺はない。その近くにある水族館には行ったことある」

「水族館、あったね。一度だけ行ったことあったかな…」

「意外と遠いから、中々来ないよな」

「確かに」

「また水族館行きたいな…遊園地も…」

「そうだな」

「そうだ、帰りに行こうよ」

「は?帰り!?絶対疲れてるって…」

「え、だって…またいつ来れるか分からないし…」

「また今度、今度行こう…」

「分かった。絶対よ!約束!約束しないと瑛祐、すぐ忘れちゃうから…」

「忘れないって」

「絶対よ」

「はいはい」