猫の世界と私

「もう、泣くな」

「…分かってる。けど、安心したら涙が止まらないの…」

「何か…もし、風邪うつしたらゴメン…」



瑛祐は結愛を抱き締める。
熱い体に、少し冷えた結愛の体温が伝わってくる。
結愛は静かに瑛祐の胸に顔を埋めた。



「大丈夫、体の強さだけが取り柄みたいなものだから」

「油断してると風邪引くぞ、俺みたいに」

「ん、確かに。気をつける」

「あっさりと納得か。傷付くな」

「じゃ、早く治して。そして、また一緒にいよう」

「了解」



瑛祐の家は、高校から近く徒歩圏内にある。
どんなにゆっくりと歩いていても、会話は十分にできない。

まだ物足りない気もするが、これ以上は迷惑や心配をかけるわけにはいかない。

瑛祐は家の門に手を触れ、自身を支えながら、すぐ近くにいる結愛へ振り返った。
少し安堵した笑顔で、結愛はそこにいる。
ショートだった髪は、数ヶ月の間にセミロング近くまで伸び、中学時の結愛を思い出した。
瑛祐は、そっと結愛の髪に触れる。