猫の世界と私

「仕方ないよ、先生も目が覚めたら帰っていいって言ってたから、今体が動くなら帰ろう。今日は私が送るから」

「悪いよ、俺帰れるから、大丈夫だよ」

「大丈夫って言って倒れたのは誰よ。いいの、私が送りたいから、ね…」

「わ、分かった…ありがとう…」

「うん」

「そう言えば、先生は?見えないけど…」

「会議があるから、職員室にいるよ。だから先生は私に“目が覚めたら帰っていい”って言ったんだよ」

「あ、そっか」



深呼吸をするように、深く息を吐き出し、瑛祐は、ゆっくりとベッドから身を起こし、立ち上がった。
多少フラつくが、突然走らない限りに足は動く。

結愛は瑛祐の腕を抱きつくように掴み、フラつく体を支え、帰路に着いた。


いつもの時間帯、いつもの夕日。
いつもの二人。


違うのは、向かう場所が駅ではなく、瑛祐の家だということ。