猫の世界と私

「にゃぁ…」



もっと、もっと、と言わんばかりに猫は結愛に擦り寄り、他の猫たちも結愛に集まってくる。



「ごめんね、私…もう行かなきゃ…時間がない気がするの…」



完全な情報があるわけではない。
ただ、結愛の中にある五感がそう言っている。


次なる世界へ足を踏み入れたことで、何かを感じることができたのかもしれない。


そう、時間がない。
だって、私は死んでいる。


結愛は意を決し、立ち上がった。
何かを察したのか、結愛に擦り寄っていた猫たちは一斉に距離を置く。


思い切って行動して、すっきりとした感覚に結愛は猫たちを見渡した。


鳴き声を発することなく、猫たちは一斉に結愛を見ている。
それは、教室を出ようとしていた結愛を見ていた猫たちと同じ視線。同じ雰囲気。