あたしは目が合ったことに驚いて、慌てて顔を逸らした。


何を思ってるんだろう、あたし。

思っていたことを声に出していたわけでもないのに、恥ずかしくなったあたしは、下を向いた。



ーギュッ



「・・・え?」

ふと、右手が冷たい何かに包まれ、驚いたあたしは、下を見た。

右手は、袖から黒いカーディガンが少し出ているゴツゴツとした凌我の手に包まれていた。


これ、って。

あたしはゆっくりと凌我の方を見る。


「なんか、お前変」

凌我はあたしに見られていることに気付いたからか、目を逸らしたままぶっきらぼうにそう言いながら、あたしの手を握る左手に力を込めた。


ードキッ

胸の脈を打つ音が、大きく響いた。


「っ・・・・・・」

また、あたしは下を向く。

握られた手は、何だか離したくない。


「・・・あったか」

凌我がそう、そっと呟いた。