「お前、食い意地張り過ぎ」
「なっ!そんなこと・・・」
凌我に少し反論するあたしだけど、凌我の笑顔に胸の高鳴りを抑えることが出来なくて、つい、目を逸らしてしまった。
「じゃ、食うか」
そんなこと、気にもしていない凌我が、そう言いながらフォークとナイフを持った。
「う、うん」
あたしもフォークとナイフを手に持つ。
そして、一口分に切ったパンケーキをゆっくり口に運ぶ。
口に入れた瞬間、とろけるような甘みが全体に広がっていった。
それは、語彙力のない私には、美味しいとしか言えない味で。
さすが、人気店という感じで。
・・・だけど。
何故か、あたしはその味をあまり感じることが出来なかった。
いや、美味しいなとか、甘いなとかは分かるけど。
他のことに、心を持っていかれているような感じ。
落ち着かない。
「どう?」
凌我の声が聞こえ、顔を跳ね上げる。
凌我は、少し心配そうな顔をしながらあたしを見ていた。
「え、あ、うん。美味しいよ?」
いきなり声をかけられて驚いちゃったからか、もしかしたら、変に誤解させちゃったかも。
美味しいのは、美味しいから。
でもやはり、凌我はあまり納得していない表情をして、パンケーキを口に運んだ。



