彼はいつだって、他人と壁を作っている。
いつも、簡単に他人を自分の中に入れない。
きっとあたしも、同じだ。
悲しそうな瞳の奥に、きっと‘何か’を隠している。
その‘何か’が、どんなに悲しくて辛いものか、あたしには分からない。
そして、それを隠していることが、どんなに切なくて苦しいものなのか、あたしは分かってあげられない。
でも、本当に苦しいんだと思う。
だから、あんな悲しそうなんだ。
だから、知りたい。
凌我の胸の中に隠した想い。
その想いのせいで、彼は誰も寄せ付けないようになったのかもしれない。
それでも、知りたい。
だって、あたしは、約束した。
凌我の居場所を作るって。
だから、きっとあたしは、凌我から離れることはない。
怖いからって理由で付き合うことにしたっての、本当は嘘なのかもな。
ただ、凌我を守りたくて。
ただ、凌我の傍にいたくて。
ただ、凌我のためにって。
そう、思ったんだって思う。
だけど・・・
そう思った理由が分からない。
同情じゃない。
そんなんじゃないことは分かるけど、分かるんだけど・・・。



