呼び鈴を鳴らすとすぐに、あたしと凌我を席に案内してくれた店員さんがやってきた。
「お待たせ致しました。ご注文でよろしかったでしょうか?」
店員さんはそう言いながら紙を1枚、ポケットから取り出した。
「あー、はい。えっと、苺Wチョコとクリーム&チョコで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員さんは凌我の注文を聞くと、あたし達に微笑みかけてから、去って行った。
「凌我、甘いもの食べるんだ……」
あたしは、凌我がパンケーキを頼んだことに少し驚いていた。
いや、ここはパンケーキのお店だから当たり前だけど、クリームにチョコって、かなり甘いと思う。
あたしの中で、凌我は甘いものとか嫌いそうなイメージだったから。
「え?ああ、俺、甘いの大好物」
「へぇー・・・そんなイメージないなあ」
なんて言いながら、少し嬉しくなる。
凌我の好きなものを知れたことが。
凌我が自分のことを教えてくれたことが。
なんだか、凌我に近づけた気がして。
あたしが、凌我の特別になれた気がして。
屋上で子猫を飼っていること。
凌我がいつも独りぼっちってこと。
それを凌我はあの時、教えてくれたけど。
でも、凌我の印象は、変わらない。



