「どれか決めた?」
驚きで目を見開いたまま硬直しているあたしに、凌我が声をかけてきた。
あたしはその声で、我に返り、凌我を見た。
「え、あ、いや・・・」
でも、すぐに目を泳がし、メニューをまた見つめた。
こんなの、高くて食べられないよ・・・
ただでさえお小遣い少ないのに・・・
「こ、ここってさ・・・高くない?」
よくよくメニューを見ると、他のパンケーキも大体そんな値段だった。
あたしは、連れて来てくれた凌我に、悪いなと思いながらもそう言う。
「ん?ああ、かな・・・?ま、俺の奢りだし、いいじゃん?」
さらっと、あまりにもさらっと言うもんだから、あたしは適当な返事を返すところだったけど、今、すごいこと言わなかった?
「お、おごり・・・!?」
あたしはメニューをバンッと大きな音を立てて閉め、その勢いで凌我の方に身を乗り出した。
凌我の口から、まるでそれが普通という風に出た言葉。
『凌我の奢り』
想像もしていなかった言葉に、
そんな言葉を普通に言い放った凌我に、
あたしは、ここがオシャレで静かなお店だということも忘れて、大声を出して驚いてしまった。
「あっ・・・」
けれど、すぐに周りの痛い視線を感じて、あたしはゆっくりと乗り出した体を椅子の腰掛に戻した。



