「目、瞑れ」
「は?」
「いいから」
いや、絶対危ないって!
身の危険が迫ってますって!
あ、あたしの!
てか、探されてるじゃん!
こんな呑気にしてちゃだめだって!
二重に身の危険が来てるよ!
あたしに!!
彼の手は、あたしの胸の少し下。
彼の足は、太もも辺り。
彼の唇は、あたしの唇まで1㎝もないだろう。
・・・恐い!
ギュッと目を瞑ったその時。
「・・・ちっ、イチャついてるカップルだけかよ。・・・あいつら、どこ行ったんだ?」
そんな声が聞こえ、次に足音が遠ざかっていく音が聞こえた。
「え?」
あたしは、驚いて目を開けた。
彼の顔は離れていって、足もあたしからどかされた。
手も制服から出て、彼はあたしの制服を整えた。
「あ、あ、ああ」
「・・・行ったみたいだな。はあ」
彼は怠そうに、少し長めの前髪を掻き上げた。
それに対して、混乱し過ぎて、言葉もろくに喋れないあたし。
そりゃそうだ。
だって、いきなり襲われかけて?
と思ったら、襲われなかったっていう・・
無駄なドキドキだったなんて・・・
「あ、あのっ、な、なな」
「・・・?ああ、わりぃ。イチャついてるフリでもしたら、気付かれないだろうなって。俺らの顔知らないだろうし。あいつらは‘なんとなく’で誰かを決めるからな」
長いご説明、ありがとうございます。
よーく分かった・・・わけない!
いや、ヤクザにバレないためっていうのは分かってるよ?
けど・・・なんであんなことっ!
別にあんなことしなくてもいいじゃん!
もしかして、ここではあんなことをしないと‘イチャついてる’にならないの!?
「で、でも・・・」
「お前、そういうの慣れてない?・・・あっ、男と付き合ったことないとか?」
彼は何かをひらめいた様にそう言った。
・・・はい、その通りです。
17年生きてきたけど、今まで誰とも付き合ったことないですよ!



