近くのカフェに入って、ホットココアを注文した。俊介は厨房を気にしながらも渋々ホットコーヒーを頼んで。


「その潔癖、治らないの?」


待つ間も落ち着かない様子の彼に笑いながら、ウェットティッシュを渡した。


「1度だけ、レストランで働いた事があります。あ、アルバイトですよ?」


俊介が?と驚いたけれど、黙って耳を傾ける。


「その時に、落ちたパンを平気で運んで行ったり…雑巾を触った手でデザートを作ったりしている光景を見てしまって。それから苦手になってしまったんです。その直後にタイミング良く食あたりになったのもありますけど。」


「へぇ、やっぱり飲食店てそういうのあるんだね。だからって、私が作った物食べられないっておかしくない?」


「それは…」



俊介がバツが悪そうに視線をそらすから、なんだか悲しい気持ちになる。


「勝手なイメージで申し訳ないのですが、瀬戸さんは大雑把な印象がありまして…」


「えっ!大雑把…」


確かに私は大雑把だ。つまり、大雑把な私が作る料理は安心して口に出来ないということなのだろう…。


面を食らっていると、俊介は楽しそうに笑い出した。



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